今回ご紹介する本:USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? V字回復をもたらしたヒットの法則
著者:森岡 毅
オススメ度:年間パス保有者・USJ好きなら必読書!
        

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?


今回は、久しぶりに本の感想を書きます。ご紹介する本は「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? V字回復をもたらしたヒットの法則」。
2014年にKindle版を購入していたのですが、そのまま放置してしまっていました……。
本日は、USJ初のビジネス書である「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? V字回復をもたらしたヒットの法則」の感想を書いていきます。

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」の簡単な内容(参照元:Amazon

お金がないならアイデアを振り絞れ!
後ろ向きのジェットコースター、ゾンビの大量放出、絶対生還できないアトラクション・・・
斬新な戦略で復活したユニバーサル・スタジオ・ジャパンの改革の軌跡をキーマンが綴る、USJ初にして唯一のビジネス書。
ずば抜けたアイデアが次々生まれる「イノベーション・フレームワーク」とは何か?

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「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? V字回復をもたらしたヒットの法則」の感想

いやぁ、素晴らしい内容でした。とても面白い!
著者である森岡毅さんが、ユニバーサルスタジオジャパンへやってきてからの奮闘の様子を書かれています。

タイトルではUSJの後ろ向きジェットコースター「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」の事に言及した内容だったのかと思っていたのですが、内容を読むと、かなり実践的なビジネス書でした。これは、サラリーマン時代に読んでおくべきだった……。

では、主婦の方やお母さん、ビジネス書なんて必要ない!っていう人には不要な内容なのか、というと、そうでもないんです。
この本は、ビジネス書であると同時に、ユーエスジェイが大好きな人に向けて書かれています。

私が数年前に年間パスを購入した理由は、初めて体験した「ハロウィンホラーナイト」があまりにもすごくて衝撃的だったからです。
そして、昨年、再び年間パスポートを購入しましたけれど、年々、USJはパワーアップし続けています。
今や、すっかりユニバーサルスタジオジャパンの虜で、次は一体何を仕掛けてくれるのか。
私や私の父は、次に繰り出されるものを予想しながら、ワクワクしております。

そんなUSJ大好きな人に向けて、どのようにしてユニバーサルスタジオジャパンはV字回復したのか。
そして、現在、次々と新しいものを誕生させ、ゲストに仕掛けているUSJの狙いを読む事ができます。
この本は、人気のエリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」のオープン直前に書かれているので、それ以降の企画について言及されていないのですが、ハリーポッターエリアスタートから現在までの、そして今後に発表されるであろうアトラクションやショーが、どのようにして生み出されていくのかを垣間見る事ができます。
USJ好きなら楽しめる内容になっている、珍しいビジネス書に仕上がっています。
文章も非常に読みやすく、読み返しも苦にならない本です。


USJと森岡毅さん

私も私の父も、日本のユニバーサルに「ハリーポッターエリア」を持ってきたり、ハロウィンホラーナイトや「バイオハザード」、「モンスターハンター」を企画した人は、ものすごい発想のアイデアマンだと思っていました。そうでないと、一年を通して、次々と、あれだけ面白いものを生み出す事はできないはず。
しかし、この本を読むと、森岡毅さんは、ものすごくクリエイティブな方ではないとわかります。

元々、森岡毅さんは、ヘアケア商品のマーケティング担当の方で、2010年にマーケティングの専門家として、USJを運営する組織「株式会社ユー・エス・ジェイ」に呼ばれ、勤める事となります。ちなみに「株式会社ユー・エス・ジェイ」は、アメリカの「ユニバーサル社」とは資本関係が一切ない、独立した経営体系になっているそうです。

森岡さんをUSJに招いた人物は、USJを倒産の危機から救い出したグレン・ガンペルという人物です。
ユニバーサルスタジオジャパンは、大阪市の第三セクター時代のゆるーい経営に加え、相次いだ不祥事により、集客を大きく減らしていました。
そして、2004年に一度、事実上の破たんをしてしまっています。その時にグレン氏はアメリカのユニバーサル社から招かれ、新しい資本の元、短期で経営の合理化を推し進め、数年で株式上場まで果たした、とんでもない人なんです。
そんな彼が森岡さんを自分の右腕としてUSJに招き、結果として森岡さんはUSJに入る事になります。

入社する前から、すでにグレン氏から試されていた森岡さんは、やはり入社前から色々と準備をして、入社する事になります。それが「地獄の三年間」の始まりだと知らずに……。


「ピンチ」を「チャンス」に変える<アイデア>

色々と書きたい事が山ほどあるのですが、今回は一点だけ書きます。

森岡さんは入社前に三段階のロケット構想を掲げていて、3つの段階に合わせて成長速度が上昇していくように企画構想を練っていました。
第一段階のアイデアは、入社前から内容を考えていらっしゃったようですが、二段階目のロケットについては事前に内容を考えていらっしゃったのかは、わかりません。
おそらく用意周到な森岡さんは、ある程度、内容を考えていたはずです。

本ではそのあたりの事は書かれていません。しかし、本の後半の書き方から察するに、様々な案をひねりだして入社されたのだと考えます。
だからこそ、森岡さんの前に「ピンチ」を「チャンス」に変える事ができる<アイデア>が現れたのだと思います。
そのアイデアとは、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」です。

森岡さんは、アメリカのユニバーサル・オーランド・リゾートで「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の試作モデルと出会いました。
本の中で、森岡さんは、プロトタイプであるはずの「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」に驚愕したと書かれています。
これは「ハリーポッター」のファンではなかった私も、初めてUSJの「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」に入った時の印象と、とてもよく似ていました。
ファンではない人間にも、このエリアは尋常ではない事がわかったからです。「ハリーポッター」ファンでなくても、映画ファンなら、非日常を求めているゲストなら、とても満足する、いつまでもこの場所にいたいと思わせる、そんなエリアなのです。

森岡さんは、一発目のロケットは「ファミリーエリア」と考えていました。そして直観的に二段階目のロケットは、この「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」だと感じ、これを日本に持ってくるんだ!と決意しました。
……本の中でも、実はこのアイデア、相当クレイジーだったと言及されています。というのも、この「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を作るのに発生する費用は400億円だと算出されました。実際は450億円かかったそうで、当時のユー・エス・ジェイの年間売り上げは約800億円。とんでもない冒険です。
しかし、ご存じの通り、この大冒険が、今のUSJの成功につながっているんですから、森岡さんという人はすごい人です。

一段階目のロケットであるファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を2012年の春までに開業。2014年度内に「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」を開業。このふたつに設備投資するため、他のものにはお金が使えない。
「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」に450億円をつぎ込むと決めたのは2010年。新しいものがお目見えする2012年と2014年度は良いのですが、その中間に位置する2011年と2013年を、いかにお金を使わず、生き残るか。
このあたりの試行錯誤どころではない、歯を食いしばり、血反吐をはくような努力の経緯が、本の中では書かれています。
この流れから、「ピンチ」を「チャンス」に変える<アイデア>が現れ、今の人気ライドアトラクション「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~」や「ハロウィンホラーナイト」などが誕生したそうです。


「世界最高をお届けしたい」そのコンセプトとは

ある時から、ユニバーサルスタジオジャパンでは「世界最高をお届けしたい」というキャッチフレーズが登場しました。
本の中では、このフレーズの意味について触れられていて、その流れから、なぜUSJがゲーム会社のカプコンと組む事になったのかがわかるようになっています。
ユニバーサルスタジオジャパンは、千葉の東京ディズニーリゾートとは異なるコンセプトで作られているんですね。

「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」などとコラボすることが多くなったUSJは、「なんでもあり」と揶揄される事が多いそうです。
しかし、決して「なんでもあり」という訳ではなく、「世界最高」の名の元に、日々、「世界最高」の何かを探し続け、どのようにゲストに非日常を楽しんでもらえるかを追及しているのです。

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? V字回復をもたらしたヒットの法則」を読んでみて、今回、納得した箇所が、いくつもありました。
「そうか、あのアトラクションは、あのショーは、そういう事だったのか!!」
先日は任天堂との提携が発表されました。この本を読むと、あのニュースは「たまたまUSJ」だったわけではなく、必然だったという事がわかります。


まとめ「ユニバーサルスタジオジャパンを愛する全ての人に読んで欲しい」

USJがどのようにして生まれ変わったのか。
テレビ番組では、ある側面だけを取り上げ、あたかも「それだけ」の理由で経営が回復したかのような演出がなされます。
しかし、実際はそうではないはずです。
ある側面が生まれた理由があり、その側面を誕生させた異なる側面があり……と様々な要因が絡み合っているはず。
この本は、そのあたりの流れがわかりやすく書かれています。

年間パスポート保有者の方やUSJが大好きっていう人にこそ、読んでほしい本でした。


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